環境問題スクラップ帳

環境問題の英文ニュースを集め、冒頭を訳して紹介します。引用元で続きを読んでください。英文多読に便利です。

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グレタ・トゥンベリ欧州議会スピーチ(2019/4/16)抄訳

【動画タイトル】

Greta Thunberg urges MEPs to ‘panic like the house is on fire’

グレタ・トゥンベリ「家が火事になったと思ってパニックになって」と欧州議会議員に訴える

※通常テキストの記事を紹介していますが、今回はスピーチの動画を紹介します。抄訳を確認してから、スピーチを聞いてみてください。

 

【引用元動画リンク】

www.youtube.com

 

【概要】
・16歳の環境活動家、グレタ・トゥンベリが欧州議会でスピーチ。気候変動への即時の対応を訴えた。(2019年、4月16日)

 

【抄訳】
(スピーチからいくつか発言を抜き出しました。訳は当ブログで作成したものです。※をつけた部分は、当ブログで補った説明、訳注です)

I want you to panic. I want you to act as if the house was on fire. I have said those words before, and a lot of people have explained why that is a bad idea. A great number of politician have told me that panic never leads to anything good. And I agree. To panic, unless you have to, is a terribe idea. But when your house is on fire and you want to keep your house from burning to the ground, then that does require some level of panic.

皆さんにパニックになってほしい。家が火事になった時のように行動してほしい。そういったことを話していると、多くの人々がなぜそれがよくない考えか伝えてくる。ものすごく多くの政治家が私に、パニックからは何もいい結果は生まれないと話した。私も賛成します。パニックになるのは、もしそうなることが必要でない場合には、ひどい考えです。でも、もし自分の家が燃えていて、そのまま全焼するのを避けたいなら、ある程度のパニックは必要になる。

 

Around the year 2030, 10 years, 259 days, and 10 hours away from now, we will be in a position where we set off an irreversible chain reaction that will most likely lead to the end of our sivilization as we know it. That is unless in that time permanent and unprecedented changes in all aspects of society have taken place, including a reduction of our CO2 emissions by at leaast 50%. And please note that these calculations are dependeing on inventions that are not yet been invented.

あと、10年と259日と10時間後の2030年。その2030年の前後には、おそらく私たちの文明を終わらせる「後戻りできないチェーンリアクション」が始まるでしょう。それは知られているとおりです。CO2の排出を少なくとも50%削減することを含めて、永続的で、かつ今までに例のない変化が社会のあらゆる側面で起こらない限りは、そうなってしまう。そして、留意してほしいのは、こういった計算は、まだ実現化されていない発明を頼りにしていることです。

 

※irreversible chain reaction irreversibleは「もう後戻りできない」、chain reactionは「連鎖反応」。現在の地球の平均気温は産業革命前と比較して1度高く、現在も上がり続けている。産業革命前と比べて1.5度を超える(現在のペースだと2030年前後)と、「連鎖反応」で、より急激な気温上昇が考えられ、対応は非常に困難になる。(例えば、「極付近にある氷は太陽光を反射するが、気温が上がり氷が海水になれば、太陽光を反射しにくくなり、ますます気温があがる」というのが連鎖反応の一例のようです。参考記事貼りつけておきます↓)

https://theday.co.uk/stories/climate-chain-reaction-risks-hothouse-earth

Scientists: Time running short before climate change effects are 'irreversible' - ABC News


※トゥンベリのスピーチは、「これは意見や憶測ではなく、科学的な事実に基づいた予測」と話しています。(ソースとなってるIPCCのレポートのリンクを貼りつけておきます↓)

Global Warming of 1.5 ºC —

 

We are in the midst of the sixth mass extinction, and the extinction rate is up to 10000 times faster than what is considered normal. With up to 200 species becoming extinct every single day.

私たちは今、第6の大量絶滅期のさなかにいます。そして、その絶滅の進行は標準と考えられる速度の10000倍です。200にも上ろうとする数の生物種が、毎日絶滅している。


※sixth mass extinction 第6の大量絶滅期。恐竜が絶滅した6600万年前が5度目。人類の諸活動を原因とする環境破壊で、生物種の絶滅が進む現在の地球を「第6の大量絶滅期」と呼びます。「平常時(絶滅期と絶滅期の間)の種の絶滅に比べて、1000~10000倍速く絶滅が進行」とする記事は複数確認しましたが、なぜ1000から10000まで幅があるのかはよくわかりませんでした。同様に、「毎日200種の絶滅」についても数字は幅があるようです。(150から200としている記事が多かったように思います)

 

(参考記事↓)

The Extinction Crisis

How many species are we losing? | WWF

 

But hardly anyone knows about these catastrophes or understand they are just the first few symptoms of climate and ecological breakdown. Because how could they? They have not been told. Or more importantly they have not been told by the right people and in the right way. Our house is falling apart and our leaders need to start acting accorfingly. Because at the moment they are not.

しかし、こういったカタストロフィーはほとんど誰にも知られていませんし、気候と環境の崩落について最初の兆候を理解するのも難しい。それについて語られていないのに、どうやって知ったり理解したりできるでしょう。話すべき人々が、正しい方法で伝えていない現状がより重要な問題でしょう。私たちの家が崩れ落ちようとしているのだから、そのリーダーたちはそれに応じた行動をすべきです。現在はそうなっていません。

 

If our house was falling apart, you wouldn't hold three emergency Brexit summits and no emergency summit regarding the breakdown of the climate and environment.

もし私たちの家が崩れ落ちようとしているなら、気候と環境の崩落について緊急首脳会談を一度も開いていないのに、ブレグジットについて3度も開いたりしないでしょう。

 

※Brexit イギリスのEU離脱。ブレグジット。

Brexit(ブレグジット)に関するよくある質問(FAQ) | PwC Japanグループ

 

You wouldn't be arguing about phasing out coal in fifteen or eleven years. If our house falling apart, you wouldn't be celebrating that one single nation like Ireland may soon divest from fossil fuels. You wouldn't celebrate that Norway has decided to stop drilling for oil outside the scenic resort of Lofoten islands but will continue to drill for oil everywhere else for decades. It's 30 yeras too late for that kind of celebration.

石炭火力発電の廃止を15年にするか11年にするかについて議論をしないでしょう。私たちの家が崩れ落ちそうな時に、たった1国、アイルランドが化石燃料への投資をやめるかもしれないだけで、浮かれたりしないでしょう。ノルウェーでは、他のあらゆる場所ではもう何十年も石油採掘を続けているのに、美しいリゾートのロフォーテン諸島の周辺でやめただけで、それを喜んだりしないでしょう。そういった祝賀は、もう30年も遅い。


※ドイツでは、電力の40%を石炭火力発電に依存していますが、それを廃止することに政府委員会は合意しているようです。下記記事では、「2038年までに廃止とし、2032に見直し、早ければ2035に実現」との記載がありました。しかし、電力会社は反発をしている現実もあるようです。(参考記事貼りつけておきます↓)

(日本語)

ドイツ、2038年までに石炭火力発電所を廃止か。パリ協定の目標達成に向けた大きな一歩 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

(英語)

Germany to phase out coal by 2038 in move away from fossil fuels - Reuters

 


※アイルランドの政府系ファンド、化石燃料を提供する、依存する企業への投資を引き上げた。原文中のdivestは「株式等を売り払う」の意味で、invest(投資する)の反対語です。(参考記事↓)

Ireland Moves to Divest From Fossil Fuels - The New York Times


※ノルウェーでは、ロフォーテン諸島の周囲での石油採掘から撤退。ここでは、トゥンベリはEU諸国の気候変動への対応を踏まえつつ、それでは足りない」と訴えている流れです。(参考記事↓)

Norway's Lofoten Is Safe From Oil Drilling After Labour Decision

 

Our house is falling apart and we are rapidly runnning out of time and yet basically nothing is happening. Everyone and everythig needs to change. So why waste precious time arguing about what and who needs to change first? Everyone and everything has to change.

自分たちの家が崩れ落ちようとしていて、残された時間が急激になくなっているのに、必要な変化はほとんど無きに等しい状況です。全員が、すべてのことを変える必要がある。それなのに、何を変えるか、誰が最初に変わるのかを議論して、貴重な時間をどうして無駄にするのでしょう?

 

When I tell politicians to act now, the most common answer is that they can't do anything drastic because that would be too unpopular among the voters.

 私が政治家の皆さんに即時の行動を訴えた時に、もっとも普通の答えは、大胆な変更はできない、なぜなら有権者に不評だから、というものです。

 

The EU election are coming up soon. And many of us who will be affected the most by this crisis, people like me, are not allowed to vote.

まもなく、欧州議会議員選挙です。そして、私のような、気候変動に最も影響を受ける世代の人たちの多くは、選挙権を持っていません。


※EU election 欧州議会議員選挙。2019年5月23~26日。1979年から5年ごとで、2019年は9回目。

(公式サイト→)Elections

 

You need to listen to us, we who cannot vote. You need to vote for us, for your children and grandchildren.

 投票権のない私たちの声を聞いてください。そして、私たちの代わりに投票して。子どもや、孫のために投票してください。

 

To do your best is no longer good enough. We must all do the seemingly impossible. And it's OK if you refuse to listen to me. I am after all just a 16 year old schoolgirl from Sweden. But you cannot ignore the scientists or the science. Or the millions of school striking children who are striking for the right to a future. I beg you, please do not fail on this.

 ベストを尽くす、ではもはや十分ではありません。私たちは、不可能に見えることを成し遂げなくては。私の言うことを耳を貸さなくてもいい。結局、私はスウェーデン人の16歳の女子学生にすぎない。でも、科学者の言うこと、科学的事実は無視しないで。そして、未来のためにスクールストライキをした何百万もの子どもたちのことを無視しないで。どうか、お願いだから、しくじらないで。

 

※グレタ・トゥンベリは2018年の8月から、 “school strike for climate”を開始。毎週1度、学校を休んでストックホルムの国会議事堂の前で座り込み、気候変動への行動を訴えるストライキ始めた。世界中の同世代に影響を与え、ストライキは広がった。2019年3月15日には、100ヵ国以上の国で子供達が行進した。

What's Next for the Youth Climate Strikes After March 15 | Time


【おわりに】

グレタ・トゥンベリの欧州議会でのスピーチから、いくつかを抜き出して訳しました。

 

スピーチの中盤、「第6の絶滅期」の深刻さを訴えるところではほとんど泣き崩れながら話し、スピーチが終わり、聴いていた議員たちからの万雷の拍手を受けるところでは、居心地が悪そうに、ほとんど傷ついているように見える彼女の表情に胸を打たれます。

 

動画のリンクから、ぜひ全体をごらんください。(Youtubeの設定で英語字幕を出せます。また、自動翻訳の日本語も、内容を把握するには十分な精度に思いました)

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