環境問題スクラップ帳

環境問題の英文ニュースを集め、冒頭を訳して紹介します。引用元で続きを読んでください。英文多読に便利です。

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グレタ・トゥンベリ英国議会スピーチ(2019/4/23)抄訳

【記事タイトル】

'You did not act in time': Greta Thunberg's full speech to MPs

「あなたたちの対応は間に合わなかった」グレタ・トゥンベリ、英国議員 にスピーチ

 


【概要】

・環境活動家グレタ・トゥンベリが英国議会でスピーチした。(2019年4月23日)

・16歳の彼女は、子どもの世代を代表して議員たちに気候変動への即時の対応を訴えた。

 


【引用元】

www.theguardian.com

(英文は引用したものです。引用元は上記リンクです。一部を抜き出して紹介していますので、ぜひ引用元でスピーチ全文を確認ください)


【抄訳】
(スピーチ全文からいくつか発言を抜き出しました。訳は当ブログで作成したものです。※をつけた部分は、当ブログで補った説明、訳注です)

My name is Greta Thunberg. I am 16 years old. I come from Sweden. And I speak on behalf of future generations.

I know many of you don’t want to listen to us ? you say we are just children. But we’re only repeating the message of the united climate science.

Many of you appear concerned that we are wasting valuable lesson time, but I assure you we will go back to school the moment you start listening to science and give us a future. Is that really too much to ask?

 私の名前はグレタ・トゥンベリです。16歳で、スウェーデンから来ました。未来の世代の代表として話します。

皆さんの中には、私たちの話を聞きたがらない方も多くいると私は知っている。私たちのことをただの子どもだと。でも私たちは、世界の気候科学の訴えを繰り返しているだけ。

私たちが(ストライキのために)大事な勉強の時間を無駄にしていると心配する方も多いようです。でも、皆さんが科学(の示すこと)に耳を傾け私たちに未来を返してくれるんら、すぐに学校に戻ると約束します。これは過剰な要求でしょうか?


※グレタ・トゥンベリは、週に1回スウェーデンの国会議事堂前に座り込み、気候変動への対応を訴えるストライキを2018年以来している。それに賛同する形で、世界中の生徒たちがそれぞれの国で学校を休むストライキやデモ行進を実施しています。今回のスピーチでは、気候変動への対応を訴えるストライキ参加者たち、また広く子ども全体を含め「we」、今まで対応を怠ってきた議員たち、大人たち全体を「you」として話しています。

(生徒たちのストライキについて、日本語の参考記事貼りつけておきます↓)

Youth strike for climate change Greta Thunberg - i-D

 

Now we probably don’t even have a future any more.

Because that future was sold so that a small number of people could make unimaginable amounts of money. It was stolen from us every time you said that the sky was the limit, and that you only live once.

 

私たち子どもには、もう未来すらないのかもしれない。

なぜなら、その未来はごくわずかな数の人々が想像できないほどのお金を稼ぐために売られたから。「限界なんてない」とか「人生は一度きり」とか言われる度に、私たちの未来は盗まれてきたから。

 

Around the year 2030, 10 years 252 days and 10 hours away from now, we will be in a position where we set off an irreversible chain reaction beyond human control, that will most likely lead to the end of our civilisation as we know it. That is unless in that time, permanent and unprecedented changes in all aspects of society have taken place, including a reduction of CO2 emissions by at least 50%.

あと、10年と252日と10時間後の2030年。その2030年の前後には、おそらく私たちの文明を終わらせる「後戻りできないチェーンリアクション」が始まるでしょう。それは知られているとおりです。CO2の排出を少なくとも50%削減することを含めて、永続的で、かつ今までに例のない変化が社会のあらゆる側面で起こらない限りは、そうなってしまう。


※この部分は、同じ内容のことを、この英国議会での談話の1習慣前にも欧州議会でのスピーチでも話しています(当ブログでも抄訳を紹介しています)。その際も、2030年までの猶予を具体的な数字で話していました。

グレタ・トゥンベリ欧州議会スピーチ(2019/4/16)抄訳 - 環境問題スクラップ帳

 

Did you hear what I just said? Is my English OK? Is the microphone on? Because I’m beginning to wonder.

私が今言ったことが聞こえましたか? 私の英語は問題ないですか? このマイクはオンになっていますか? だって、(私の話が聞かれているかどうか)分からなくなってきました。


※この呼びかけに続けて、「各地で話をしたけど、誰も気候変動について話さないし、何も変わっていない。それどころかCO2排出はさらに増えている」と訴えています。

 

The UK is, however, very special. Not only for its mind-blowing historical carbon debt, but also for its current, very creative, carbon accounting.

それでもイギリスは、特別なところです。今までの考えられないほどのカーボン負債だけではなく、現在はとても創造的なカーボンアカウンティングをしている。

 

※carbon debt:CO2の排出とCO2の吸収を比べて、排出が上回っている状態で、その量のこと。日本語の訳語としては炭素負債、カーボン負債、カーボンデット、などが考えられますが、あまり定まっていないようです。Cambridge Dictionaryでの語義説明を引用すると、「the difference between the amount of carbon dioxide produced by a country, company, etc., and the amount that it offsets」となります。

 

(解説動画のリンクも貼り付けておきます↓)

Carbon Debt - YouTube


※carbon accounting:カーボンアカウンティング。炭素会計。CO2排出量、削減量を算出し開示すること。wikipediaリンク貼っておきます↓

Carbon accounting - Wikipedia

 

Since 1990 the UK has achieved a 37% reduction of its territorial CO2 emissions, according to the Global Carbon Project. And that does sound very impressive. But these numbers do not include emissions from aviation, shipping and those associated with imports and exports. If these numbers are included the reduction is around 10% since 1990 - or an an average of 0.4% a year, according to Tyndall Manchester.

「グローバル・カーボン・プロジェクト」によれば、1990年以来イギリスは域内でのCO2排出について、37%の削減を達成しています。とても素晴らしいこと。でも、その計算には、航空産業、海運業、それに伴う輸出入でのCO2排出は含まれていない。もし含めるなら、1990年からの削減は10%程度、または年平均0.4%程度になると、ティンダル・マンチェスターは伝えています。


※Global Carbon Project(GCP):世界のCO2についてその収支を計算するプロジェクト。公式サイトリンク貼っておきます↓

https://www.globalcarbonproject.org/carbonbudget/index.htm


※Tyndall Manchester:マンチェスター大学を中心として設立された調査団体のようです。

https://www.tyndall.manchester.ac.uk/

 

But perhaps the most dangerous misconception about the climate crisis is that we have to “lower” our emissions. Because that is far from enough. Our emissions have to stop if we are to stay below 1.5-2C of warming. The “lowering of emissions” is of course necessary but it is only the beginning of a fast process that must lead to a stop within a couple of decades, or less. And by “stop” I mean net zero - and then quickly on to negative figures. That rules out most of today’s politics.

しかしおそらく、気候変動の危機に関して最も危険なのは、CO2排出を「減らすべき」という誤った認識でしょう。それだけではまったく足りない。温暖化の気温上昇を1.5度~2度以内に抑えたいのなら、CO2排出を「止めるべき」だからです。「CO2排出の削減」はもちろん必要です。でも、それはこの20年以内、できればもっと早くにCO2排出を止めるための手始めにすぎない。「止める」というのは(CO2の排出量と吸収量の)差し引きゼロ、達成したらそのまま吸収量が上回る状態にすべきという意味です。その前提に立てば、今日の政治のあり方は排除される。

 

People always tell me and the other millions of school strikers that we should be proud of ourselves for what we have accomplished. But the only thing that we need to look at is the emission curve. And I’m sorry, but it’s still rising. That curve is the only thing we should look at.


私や世界中のストライキ参加者に、「成し遂げたことを誇っていい」と人々は言います。だけど、私たちが見るべきは排出量グラフの曲線だけです。残念ですが、その線は依然として上昇している。その曲線だけが、私たちが注視すべきものです。

 

“So, exactly how do we solve that?” you ask us - the schoolchildren striking for the climate.

And we say: “No one knows for sure. But we have to stop burning fossil fuels and restore nature and many other things that we may not have quite figured out yet.”

Then you say: “That’s not an answer!”

So we say: “We have to start treating the crisis like a crisis – and act even if we don’t have all the solutions.”

 
私たちはしばしば聞かれます。「それで、どうやって(この危機を)解決するんだ?」

私たちはこう答える。「誰も確かなことは分からない。でも化石燃料を燃やすことは止めるべきだし、自然環境や、私たちがまだ確かには知らない多くのことを守り回復させなくてはいけない」

すると大人たちは、「それは答えになってない」と言う。

私たちは、「危機を(無視せずに)危機として扱うこと、解決策がまだ分からなかったとしても行動すること」と言う。

 

We say that all those solutions needed are not known to anyone and therefore we must unite behind the science and find them together along the way. But you do not listen to that. Because those answers are for solving a crisis that most of you don’t even fully understand. Or don’t want to understand.


私たちが言っているのは、必要な解決策はまだ誰にも分からないからこそ、科学のもとに団結して、行動する過程で解決策を見つける必要があるということです。でも皆さんは、この主張に耳を貸さない。そもそもの危機自体をしっかりと理解していないか、理解しようともしていないからです。

 

You don’t listen to the science because you are only interested in solutions that will enable you to carry on like before. Like now. And those answers don’t exist any more. Because you did not act in time.

Avoiding climate breakdown will require cathedral thinking. We must lay the foundation while we may not know exactly how to build the ceiling.

 

科学(の示す事実)を聞こうとしないのは、皆さんがかつてと、あるいは現在と同じ生活を続けられる策にしか興味がないからです。でも、そういった答えはもう存在しない。皆さんの対応は間に合わなかった。

 

We children are doing this to wake the adults up. We children are doing this for you to put your differences aside and start acting as you would in a crisis. We children are doing this because we want our hopes and dreams back.

I hope my microphone was on. I hope you could all hear me.

 

私たち子どもは、大人たちの目を覚ますために訴えてます。私たち子どもは、不和や意見の相違を脇に置いて、危機に直面した時のように行動することを大人たちに求めます。私たちこともは、希望や夢を返してほしくて、訴えを続けてるのです。

このマイクがオンになってること、私の言うことが、耳に届いていることを願います。


【おわりに】
スピーチの流れがなるべく分かるようにと抜き出して訳しました。WWF UKがスピーチの動画をYouTubeにアップしていますので、リンクを貼りつけておきます。ぜひ全体を確認してみてください。

 

www.youtube.com

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